Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおんなのしょうがい

嵐・ある女の生涯

島崎 藤村

Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme

Aozora Bunko

「お前はどうしてそんなに泣くの」

とお三輪は自分の側へ来る子守娘に声を掛けて見た。

「去年のことでも思い出したのかい」

とまたお三輪が言うと子守娘はそれを聞いて、一層しくしく泣いた。この娘は、焼けない前から小竹の家に奉公していたもので、東京にある身内という身内は一人も大火後に生き残らなかった。全く独りぼっちになってしまったような娘だ。お三輪について一緒に浦和まで落ちのびて来たものは、この不幸な子守娘だけであった。多勢使っていた店の奉公人もそれぞれ暇を取って、皆ちりぢりばらばらになってしまった。

お三輪は子守娘をつれて町へでも買物に行く度に、秩父の山々を望んで来た。山を見ると、彼女は東京の方の空を恋しく思った。

新七から来た手紙には浦和まで母を迎えに行くとあって、ともかくもお三輪は伜の来るのを待つことにしていた。彼女は何を置いても、新七の言葉に従わねばならないように思った。それをしなければ気が済まないように思った。折角伜がそう言ってよこして、新しく開業した食堂を母に見せたいと言うのだから。

お三輪は震災後の東京を全く知らないでもない。一度、新七に連れられて焼跡を見に上京したこともある。