Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんなのしょうがい
嵐・ある女の生涯
島崎 藤村
Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme
「オイ、君」
と新七を呼び捨てだ。新七はそれを聞いても、すこしも嫌な顔をしなかった。どこまでもこの友達の女房役として、共に事に当ろうとしていた。
昼近い頃には、ぽつぽつ食堂へ訪ねて来る客もあった。腰の低い新七は一々食堂の入口まで迎えに出て、客の帽子から杖までも自分で預かるくらいにした。そして客の註文を聞いたり、いろいろと取持ちをしたりする忙しい中で、ちょっとお三輪を見に来て、今のは名高い日本画家であるとか、今のは名高い支那通であるとか、と母に耳うちした。そういう当世の名士がこの池の茶屋を贔屓にして詰め掛けて来てくれるという意味を通わせた。
「御隠居さん、まあこの景気を御覧なすって下さい」
とお三輪の側へ来て言って見せるのは金太郎だ。見ると、小砂利まじりの路の上を滑って来る重い音をさせて、食堂の前で自動車を横づけにする客なぞもあった。
新七はお力に手伝わせて、葦簾がこいにした休茶屋の軒下の位置に、母の食卓を用意した。揚物の油の音は料理場の窓越しにそこまで伝わって来ていた。
「御隠居さんはここへいらしって下さい。ここでお昼飯を召上って下さい。内は反ってごたごたいたしますから」