Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんなのしょうがい
嵐・ある女の生涯
島崎 藤村
Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme
とお力は款待顔に言って、お三輪のために膳、箸、吸物椀なぞを料理場の方から運んで来た。
「おお、これはおめずらしい」
と言いながら、お三輪はすっぽん仕立の吸物の蓋を取った。
食堂の方でも客の食事が始まっていた。一しきりはずんで聞えた客の高い笑声も沈まってしまった。さかんな食慾を満たそうとする人達は、ほんとうにうまいものに有りついた最中らしい。話声一つ泄れて来なかった。静かだ。
「どうぞ、御隠居さん、ゆっくり召上って下さいまし。今日はわたしにお給仕させていただきますよ」
と言いながら、お力は過ぐる七年の長い奉公を思い出し顔に、造り身を盛った深皿なぞを順にそこへ運んで来た。このお力の給仕で、広瀬さんが得意の醇粋な日本料理を味っていると、焼けない前の小竹の店のことが今更のようにお三輪の胸に浮んで来た。
昼飯後に、お三輪は同じ食卓の側に腰掛けていて、新七が来るのを待った。そこは葦簾のかげから公園の通路を隔ててアカシヤの木の見えるようなところで、親子二人ぎりで話すにはよさそうな場所であった。新七もいそがしい人だ。客へ出す料理の勘定書まで書いて置いて、それから母の側へ来た。