Japanische Klassiker mit Furigana
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まぼろしのかなた
幻の彼方
豊島 与志雄
Lesen Sie 幻の彼方 (まぼろしのかなた) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.763 Zeichen · 84 Bildschirme
「お前は、」と彼は囁くように云った、「お胎の子供に対して、どんな感じがする?」
秋子は黙ったまま、微笑んで彼の方を見返した。そんな問に答える必要はないという勝ちほこった、それでいて何処かに皮肉な挑戦的な調子を含んだ、微笑だった。が次の瞬間に、彼女はぴくりと肩を聳かして、あなたは? と眼付で尋ねかけてきた。
彼はひょこりっと立った。てれかくしに立ち上ったのではなかったが、後で自分ながらそう感じた。
「姙娠なら冷えるといけないから、中にはいろう。ほんとに注意しなけりゃいけない。」
けれど、何を云ってるんだ! という気になって馬鹿々々しかった。すぐに寝た。秋子は茶の間で暫く愚図ついていた。
その晩彼は夢をみた。朝になると、どんな夢だったかは思い出せなかったが、大変目出度い夢だったようにも、または不吉な夢だったようにも、考えようによってどちらにも感ぜられた。そして、朝日の光の中を会社へ出かけながら、オチニ、オチニ……という気持で足を運んでいった。
目出度くても不吉でも、そんなことは構わない。オチニ、オチニ……幼い時小学校でやらされた通りのその歩調が楽しかった。