Japanische Klassiker mit Furigana
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げんじゅつてんまたろう
幻術天魔太郎
野村 胡堂
Lesen Sie 幻術天魔太郎 (げんじゅつてんまたろう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.616 Zeichen · 90 Bildschirme
と立ちすくみました。
青畳をぼかして、真珠色の絹あんどん、白りんずの吊夜具、将軍家の寝所にはちがいないのですが、ふとんの中はもぬけのからで、めざす相手の家光は影も形もなかったのです。
駿河太郎は調べにしらべて、ここまでは忍びこんだのですが、たった一つ、将軍家光の寝所はおなじ屋根の下ながら東西南北に四ツあり、日により時によってそれをグルグルかえるのだということまでは知らなかったのです。
どこでどうからだがさわったものか、長局いっぱいにはりわたした警備の鈴が、さえきった音をたてて、近くから遠くへ、遠くから近くへ、カラカラカラカラとなりました。
「それッ、曲者でござるぞ、方々おであい召され」
御殿の中は、いっぺんに光の洪水になりました。老女、中臈、腰元、端女まで、おびただしい数の女、女、女。老いたるも若きも、用意の長刀、脇差をひらめかして、駿河太郎たったひとりを目あてに、八方からドッとおしよせ、おっとりかこみ、人垣をつくって手捕りにしようと意気まくのです。
この時、駿河太郎は、とってようやく十六歳、花のような美少年でした。水をくぐったからだは八方の灯をうけてアユのように光りますが、顔色はやや青ずんで、一刀をふりかぶったまま、花ふぶきのようにおしよせる女の大軍をきっとにらみます。