Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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いくどめかのさいご

幾度目かの最期

久坂 葉子

Lesen Sie 幾度目かの最期 (いくどめかのさいご) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 59.103 Zeichen · 121 Bildschirme

Aozora Bunko

はっとした。その声はちがう。まったくちがう。私は相手の顔をみた。それはまるくでっぷり太っていて、まなこは細く、彼とは正反対の容貌である。彼ではなかったのだ。私は息のつまるような思い、羞恥のほてりを感じる。

「あの、私が戸田ですが」

更にその言葉をきく。私は思いきって口をひらく。

「あの――戸田先生、他にいらっしゃいません? 貴方じゃなかったんです。戸田明雄です……」

「居りませんね……ああ、戸田明雄。そう、あれは昨年よしましたよ。多分、開業したんでしょう。何処とも知りませんが――」

「どうも……」

「いや」

革のスリッパは立ち去る。私は茫然とたちすくんだままこの二カ月の事を思い出した。出張の度にこの病院の傍をまわり道してまで通り、彼に会いに行く勇気のないままにこの川っぷちを何度往復しただろう。彼はとうにいなかったのだ。ほとんど絶望。私の頭に絶望という字が回転しながらだんだん大きくひろがって行く。どうやって駅までたどりつき電車に乗ったのかわからないが、とにかく私は傘もささなかったのであろう、髪の毛はぬれており肩もつめたい。ゆれる電車の中で私はぼんやり車窓を見やっていた。