Japanische Klassiker mit Furigana
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いくどめかのさいご
幾度目かの最期
久坂 葉子
Lesen Sie 幾度目かの最期 (いくどめかのさいご) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 59.103 Zeichen · 121 Bildschirme
四年のあいだのこと
うすねずみいろの毛地のワンピースを着て、私は花束を持っている。今さっき、知合の家へあそびに行き、その庭に一ぱいあふれるように咲いていたスイートピーをすきなだけきらせてもらい、その帰りである。花はむっとした少し鼻につきすぎる位の香りで、それはこいむらさきやうすいピンクや白や各々の色より発散したものが、また一つになって新しく別なものをこしらえ私に投げかけるようだ。この香りに、何か、不思議な作用があるのだろうか。
大きな木立のある邸の横手の細いみちを、時々明るくなったり暗くなったりする青葉から洩れてくる五月の太陽。このひかりに何か魔術がかかっているのだろうか。
私はこれからまっすぐ家へかえるべきであるのに、邸裏をぬけて駅へ出ると、そこから電車で十分とかゝらないA駅への切符を買い求めてしまった。
川っぷちのA駅に降りたったのは、私の記憶の中では初めてのことらしい。南側の出口を無意識に切符を渡して出ると、丁度三時の光線が白い埃っぽい道に影もつくらず照っており、疲れを感じる位である。
花束をかかえて私はその道を南へだらだら下ると、すぐ右手に想像していた通りの細い道があり、新しい西洋館や和洋折衷のハイカラな家が静かに並んでおり、通る人など殆んどいない。