Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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いかりのむし

怒りの虫

豊島 与志雄

Lesen Sie 怒りの虫 (いかりのむし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.457 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

ゆっくり御相談したいから、考えておいて下さいね。」

木山は一歩退って、彼女の顔をじっと見つめた。

「明日、二時から三時までの間に伺います。きっと、待っていて下さいね。」

「承知しました。」

木山は冷かに言い捨てて、さっきの席に戻って行った。酒杯を持つ手先がかすかに震えていた。

塚本夫人も、木山と同時に足を返して、先程の仲間に加わった。隣りに崎田夫人がいた。その方を塚本夫人は顧みて、にこと笑った。

「木山さん、この頃、どうかなすってますわね。ひどく怒りっぽいし、先程は、あんな失礼なことを言ったりして……。わたくし、ちょっとたしなめてやりましたわ。いい気味だった。」

然し、塚本夫人のその態度は、少し大胆すぎた。木山と彼女との間になにか情愛関係がありそうだとは、親しい仲間の認めるところだったのである。そして木山の近頃の怒りの虫を、そのことと結びつけて考える者もあった。見ようによっては、最近、塚本夫人も落着きを失いかけてるらしい点があった。

その晩、塚本夫人は真先に帰っていった連中のうちの一人だった。そして木山は、最後まで居残って酒杯を手にしてる連中のうちの一人だった。