Japanische Klassiker mit Furigana
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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
Lesen Sie 怪しの館 短編 (あやしのやかた) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.915 Zeichen · 165 Bildschirme
は、全く白犬が人間の男を、食い殺しているとそういう以外、いうべき言葉はありませんでした。古び赤茶け、ところどころ破れ、腸を出している畳の上には、蘇枋の樽でも倒したかのように、血溜りが出来ておりました。おお血といえば行衣姿のお綱の、胸から腹から裾の下まで、血で斑紋をなしているのです。血で縞をなしているのです。この凄まじい光景には、さすがの国臣様も怯えましたものか、抜き身を頭上にふりかぶったままで、進みもなさらず退きもなさらず、小刻みに肩を刻んでおられました。でもわたしはこういう際にも、ご上人様はどこにおられるかと、座敷の四方を見廻しました。おおご上人様はおられました。遙かの奥に古び色ざめた、紫の幕が下げてあり、金襴縁の御簾がかけてあり、白木ともいえないほど古びた木口の、神棚が数段設けられてあり、そこに無数の蝋燭が、筆の穂のような焔を立てて、大きな円鏡の湖水のような面を、輝かせながら燃えていましたが、その前の辺に俯伏しになられ、凄まじい惨酷な光景を見まいと、両の袖で顔を蔽われて、月照上人様はおられました。
でもどうしたらそのご上人様を、この恐ろしい犬神の祈祷所から、連れ出すことが出来るでしょうか? ただわたしは喘いでばかりおりました。