Japanische Klassiker mit Furigana
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あくむ
悪夢
豊島 与志雄
Lesen Sie 悪夢 (あくむ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.930 Zeichen · 32 Bildschirme
この都会の隅々まで警察の手が行き渡ってることを、私は新聞紙上でよく知っていた。まごまごしてる場合でないと思った。自分の下宿にじっとしてるのが、一番安全だという気がした。遠い曲りくねった迂回をしながら、私は下宿へ帰ってきた。そして下宿の格子戸に手をかけてから、私は初めて後を振返ってみたのである。それまで一度も後が振向けなかった。
お上さんが出て来て、食事は? と聞いたのに対して、もう済してきたと私は答えた。それから自分の室に暫くじっとしていたが、どうも心の落付が悪くて、皆の――と云っても、素人下宿のことで下宿人は三人しか居なかったが――皆の集合室みたいになってる茶の間へ出て行った。哲学を研究してるとかいう大学生が一人、長火鉢の前で退屈そうに煙草を吹かしていた。お上さんは隅っこの方で針仕事をしていた。私は大学生の向うに長火鉢の側に坐った。そして二人で、大凡次のような対話をした。
「一体、何かある興味のために、と云っちゃ変ですが、まあ或る気持のために、……例えば、人を殺すとしましたら、その人殺しは、他の場合よりも罪が重いものでしょうか。」
「さあ、僕は専門家でないから、罪の軽重は分りませんが、そういう殺人でもやはり、立派な殺人には相違ありませんね。