Japanische Klassiker mit Furigana
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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
Lesen Sie 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.280 Zeichen · 301 Bildschirme
わたしは、その人と約束した時間に、このお社の森の中へ来たのです。エエ、ここなのです。その人と外で出逢う時はいつもこの森の中だったのです。そして、この間からの、わたしの恐ろしい境遇を、よく相談しようと思ったのです。
ところが、その晩は、どうしたことか、その人の姿が見えません。丁度ここです。このお社の床下に、わたしはあの人を待って待って、明け方まで待ち暮らしました。まさかとお思いでしょうね。でも、わたしは何かに魅入られていたのです。本当に夢のように、一夜をここで過したのです。
そして、夜の白々あけに、ふと見ますと、そうです、丁度この柱でした。この柱に小さな紙切れが貼りつけてあるのに気がつきました。その紙切れに、何と書いてあったとお思いです。
縁切り状でしたの。もうこれっきり、あなたと逢うことはないでしょう。楽しかった夢を忘れませんと、そう書いてあったのです」
語り終って、男装の竜子は、又込み上げる悲しさに、今は恥も外聞も忘れたように、声を立てて泣き伏すのであった。
思わぬ長話に、さい前から三十分余りも時がたっていた。人なき深夜の社殿の床下で、男装の女と、モーニング姿の私立探偵とが、光と云えば懐中電燈ただ一つをたよりに、ヒソヒソと語り合う。