Japanische Klassiker mit Furigana
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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
Lesen Sie 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.280 Zeichen · 301 Bildschirme
手を上げれば、同時に千人の手が上がり、歩けば同時に千人の足が動くのだ。
天井を見上げると、そこには逆立ちをした博士が、じっとこちらを睨みつけている。床を覗けば、そこにも足を上にしてぶら下っている博士が、下の方から見上げている。そして、それら二様の逆の姿が、無限の空にまで、奥底知れぬ六角の井戸の底まで、数限りもなく重なり合って、末は見通しも利かぬ闇となって消えているのだ。つまり、前後左右は勿論、上も下も無限の彼方に続いていて、まるで大空に投げ出されでもしたような、大地が消えてなくなったような、云うに云われぬ不安定の感じであった。
どちらを見ても、行き止りというものがなく、自分自身の姿が無限に続いているのである。この恐ろしい場所を逃れるためには、それらの何千という人々を、掻き分け押し分け、無限に走る外はないという、奇怪千万な錯覚が起るのだ。
博士はふと、こんな見世物を興行させて置くのは人道問題だと思った。博士のような思慮分別のある中年者でさえ、たまらない程の不安を感じるのだから、若し女子供がこの鏡部屋にとじこめられたなら、恐怖のために泣き出すに違いない。