Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おしみなくあいはうばう

惜みなく愛は奪う

有島 武郎

Lesen Sie 惜みなく愛は奪う (おしみなくあいはうばう) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.397 Zeichen · 159 Bildschirme

Aozora Bunko

私はかかる試みをする始めから、何かどうしてもその境遇では満足し得ない予感を持ち、そしてそれがいつでも事実になって現われた。私はどうしてもそれらのものの前に at home に自分自身を感ずることが出来なかった。

それは私が大胆でかつ誠実であったからではない。偽善者なる私にも少しばかりの誠実はあったと云えるかも知れない。けれど少くとも大胆ではなかった。私は弱かったのだ。

誰でも弱い人がいかなる心の状態にあるかを知っている。何物にも信頼する事の出来ないのが弱い人の特長だ。しかも何物にか信頼しないではいられないのが他の特長だ。兎は弱い動物だ。その耳はやむ時なき猜疑に震えている。彼は頑丈な石窟に身を託する事も、幽邃な深林にその住居を構えることも出来ない。彼は小さな藪の中に彼らしい穴を掘る。そして雷が鳴っても、雨が来ても、風が吹いても、犬に追われても、猟夫に迫られても、逃げ廻った後にはそのみじめな、壊れ易い土の穴に最後の隠れ家を求めるのだ。私の心もまた兎のようだ。大きな威力は無尽蔵に周囲にある。然し私の怯えた心はその何れにも無条件的な信頼を持つことが出来ないで、危懼と躊躇とに満ちた彷徨の果てには、我ながら憐れと思う自分自身に帰って行くのだ。