Japanische Klassiker mit Furigana
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme
私は、ふと指さきで地図を撫でた。はじめて疑惑に似たようなものを胸にうかべていた。真理子には、この地図は死んだ一枚の紙きれにすぎなくなっていたのか? 空想の翼も油がきれ、この夢の旅によろこびを失っていたのか。私は仔細にみた。気づいたとおり、地図には大きく、ななめに深い爪あとが交叉していた。
するどいその線の痕が、爪のながい真理子の指を想い出させた。私は、空想の世界から顛落した真理子を、あらゆる錯覚や幻影やを失い、まるで翼をなくした孤独な鳥のように、じっとこの後架の壁をみつめている真理子をおもってみた。……知ったことじゃない、おれの。私は絶望をかんじながら心のなかでくりかえした。
帰りしな、祭壇の前に真理子の母のすがたが見えなかった。煙は途切れていた。線香を立てにはいり、私はつよまった屍臭のなかに立った。濃い屍臭はねっとりと重くながれ、白布に一匹の蠅がとまっていた。
となりの部屋には保井と佐藤しかいず、保井は家の者には寝てもらった、みんなが朝までよろしくお願いしますといっていたと告げた。
「ありがためいわくでね、どうも。みんな勝手なことをいうから」彼は笑った。