Japanische Klassiker mit Furigana
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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme
四
「なんやね、これは……満足な椅子ひとつないな。これじゃ、ひどすぎるよ。清水さん、こっちのほうにも家具を入れて、一通り、設営してやんなさい。それくらいのことをせんでは、あんたも義理が悪かろ」
四
五十雄君を部屋まで送って、ついでに庭向きの賢夫人のお居間をのぞいてみると、夕方まで帰らないはずの賢夫人と千々子さまが、人目を忍ぶように、ひっそりと、おひそまりになっていた。お召物の仕掛けを見ると、見馴れたふだんのお服で、外出したようすはない。
「おやっ、いつ帰ったんだ」
「なんです。その、おっしゃりようは」
「失礼しました……いつお帰りになりましたの」
「いつだっていいでしょう。それを聞いて、どうしようというの」
「ちょっとおたずねしたので……広い家ってのは、なるほど、お子供向きですね。隠れん坊ができますから」
「なにをぐずぐずいってるんです。用でもあるんですか」
「お父さまが呼んでますから、お迎いに」
「迎いなんかいらない。呼ばしておけばいいのよ」
千々子さまは編物の手をやすめて、賢夫人に意味ありげな眼づかいをすると、
「パパは、やはり逃げるつもりだったのよ。ママを呼びに来るようでは、ようすが知れるわね。