Japanische Klassiker mit Furigana
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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme
三
五十雄君は、ここにこそ、痛みがあるというように、胸を手でおさえて、
「僕に、どういう返事をしろというのでしょう。あのひとの裸を見たといえば、お気にいるんですか? しかし、頭の弱いひとのやった失策を、下劣な興味の対象にするようなことは、慎しむべきですね……ともかく、この話はやめましょう」
祝詞をあげるような、例の静かな声でつぶやいていたが、なんのせいか、急にサッと頬を染めた。様子が変なので、百々子が、
「どうしたの」
とたずねると、いよいよ赧くなって、羞かんだような微笑をしてみせたのは、異様であった。
三
五十雄君の背骨には、『戦争の思い出』が深く腐れこんでいて、一日のうち、少くとも三時間は整形用の板のベッドに寝ないと、身体の調子が悪いらしい。
五十雄君の青春は、汚れのないサラのままで中断され、いきなり廃品になった情けない青春で、恋愛だの結婚だのということは、とおのむかしに、あきらめているようだから、羞かみ笑いをしたくらいで、隣家のひょんなお嬢さんを好きになったとも思わないが、犬吠岬の自炊式のサナトリウムにいるとき、ベッドに寝たきりになっているはずの五十雄君が、白系ロシア人だかスペイン人だか、すごく綺麗な西洋人のお嬢さんの病室へ入りこんで、スプーンで口もとまでお粥を運んでやるという、熱い奉仕をしていたような例