Japanische Klassiker mit Furigana
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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme
かくいう百々子は、そのころ学校があったので、日曜日に、ときどき見舞いに行ったが、五十雄君のそばに、千々子さまがいたためしがない。
「千々子さまは、どうしたの」
とたずねると、五十雄君は、地獄へ堕ちる瞬間の光景を垣間見た、聖者のような悲愴な顔で、さっき町へ行ったとか、千葉まで買物にとか、ささやくような声でつぶやいていたが、いまになって思いあわせると、千々子さまは、はじめっから五十雄君をダシにしていたので、賢夫人の諒解のもとに、東京へ出てきては、借家人のシュラー氏といいくらいに遊び歩いていたというわけなのだろう。当の千々子さまは、
「パパ、麻布の家に、どんなひとが住んでいるんでしょう。どうせ、威張りくさった嫌な奴にちがいないわ」
とか、あるいはまた、
「シュラーなんて、ナチの親衛隊長みたいな名だけど、まさかドイツ人じゃないでしょうね」
などと大恍けに恍け、シュラーがアメリカへ帰ってからは、玄関の三畳にひっこみ、行い澄ました顔でひねもす長い胴着を編みかえし、とうとう最後まで尻尾をつかませなかった。
石田氏は、相手に勝手にしゃべらせておいて、プールのあるほうをぼんやりと見おろしていたが、説話が一段落になったところで、だしぬけにヘンリ清水にたずねた。