Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme

Aozora Bunko

会話のやりとりをさせたら、うちの賢夫人も、相当な魅かしの名人だが、俗受けばかりねらうので、おなじことをしゃべらせても、この半分もスマートにいくまいと思われた。

いま電話で流麗と話しかけているのは、赤坂とか新橋とか、そういったところの一流に近いひと……さもなければ、よく切れる、待合の若い女将といった向きなのだろうが、うちの石田氏なるパパが、そういう方面に深入りして、あたしのワニちゃんなどと呼ばれていたとは、今日の今日まで、まるっきり知らなかった。

復員後、間もないある夜、石田氏が酔って帰ってきて、賢夫人にこんなことをいった。

「今日、宴会の流れで、なんとかいう銀座の大きなキャバレへ行った。五百人からの若い女が、広くもない客席で、ひしめいている壮観を想像できるかね? そのすさまじさといったらない。このごろのような、バカな芸者の相手になっているのも悲劇だが、あんなふうに、女がダブついているのを見ると、なにか、あわれで、気が滅入ってしまうよ」

バラックの楽園に住みつくようになってから、石田氏は急に爺むさくなり、日乾しのきいた干鱈の枯淡な風情で、人間らしい情緒などは、どこからも感じられなくなってしまった。