Japanische Klassiker mit Furigana
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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme
そのときのキャバレの話に関連して、石田氏はすっかりダメになって、あとは、胃癌か中気になるのを待つばかりという、人生の地味なところへ落着きかけているのだと、次女も賢夫人も、信じていたのである。
上品めかした嘘をいって、われわれ肉親を今日まで欺していたかと思うと、二重に腹が立って、軽蔑してやりたくなるが、勿体らしい石田氏が、どこかの一流のひとと狎れあって、ワニだのハトだのと、愉快にやっているところを想像するのは、そんなに不愉快でもない。
百々子の気持は、いくぶん同情するほうへ傾きかけていたが、賢夫人のほうは、同情どころのさわぎではないらしい。眦を蒼ずませ、なにか叫びだしそうな憤怒の形相をしていたが、さすがに環境をわきまえ、無言のまま、受話器を置いた。
賢夫人は、さりげないようすで広縁にもどると、さっきの段々に腰をおろし、いつもの、たるんだような顔になって、柱に凭れてうつらうつらしだした。
知らないひとが見たら、居睡りをしているのだと思うだろうが、これは、うちの賢夫人が、手足の力をぬいて、あるだけの思考能力を、大脳に非常呼集しているすがたなのである。
百々子には、石田氏の立場もわかるが、賢夫人の心境も察しられないわけではない。