Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme

Aozora Bunko

今日は背骨のぐあいがいいのか、コルセットをはずして窓際の籐椅子に掛け、永遠の哲人のような眠い眼差で、夕陽に染まった玉あじさいの花むらをながめていた。

「はい、ご夕食」

五十雄君の膝のうえにお盆を置こうとすると、片闇になった奥のベッドのほうで、女のすすり泣く声がきこえたので、おどろいて、そちらを見てみた。

軽そうな、キャメルのスプリングを着た、二十二三のほっそりとした女のひとが、五十雄君のベッドに浅く掛け、顔にハンカチをあて、思いだしたように、しゃくりあげている。

「おっと、部屋をまちがえたかな」

この七年、ほとんど寝たきりになっていた五十雄君にも、こんな見事な春があったのかと、百々子が照れかくしをいいながら、ひき退ろうとすると、五十雄君が、

「おい、ここにいてくれよ」

と弱りきった顔でひきとめた。

「悪かったわ。ノックもしないで入ってきて」

「なにをいってるんだ。勘ちがいをしちゃ、困るよ」

様子が変なので、聞いてみた。

「あのひと、なんなの?」

「知りませんね。庭から、ぶらっと入ってきて、泣いているんだ。どうしたのか、聞いてみてくれよ」

百々子が、おそるおそる、女のひとのそばへ行った。