Japanische Klassiker mit Furigana
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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme
この家に、まともに家具を入れたら、すくなくとも五六十万はかかる。臍繰りくらいじゃ、問題にもなにもなりはしないよ」
「もちろん、そんな金でやれるわけはありませんが、退職手当の残りがあるはずだから」
「退職手当? それはなんの話?」
千々子さまが、すらりと立って行ったが、間もなく、後になにか隠しながら戻って来ると、賢夫人の腰を突っついて、持ってきたものを、そっと手渡しした。賢夫人は、なにやらいう品の悪い芸能雑誌を後ろ手で受取ると、グラビヤのあるところを開いて、だまってテーブルのうえに置いた。
どこかのストリップ劇場の舞台と客席を、妙な角度でスナップした、生々しい実況写真で、ストリッパァが舞台のうえから注ぎかけるビールを、かぶりつきにいる石田氏が、コップにもらって飲んでいるところが、無類の鮮明さで写っていた。
石田氏が役所をやめたのは、今年の一月のはじめだったそうだが、それから四ヵ月、雪の日も風の日も、折鞄を抱えて、東京の都内をあてもなく歩きまわるのは、さぞ骨の折れることだろうと同情していたが、行先に困って、浅草でストリップを見るほどの悲境におちていたとは、思いもしなかった。