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Japanische Klassiker mit Furigana

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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

Lesen Sie 我が愛する詩人の伝記 (わがあいするしじんのでんき) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.728 Zeichen · 231 Bildschirme

Aozora Bunko

その仕事のかたわらにこの杏夫人がいて、杏夫人は夜になると昼間よりも最っとふくれて見え、藤村はそれを他人に見とれる美しさで見とれていた。何て仕合せな老作家だろうという考えが、静子夫人にも絡んで見え、私はむか腹立てている人間の癖づいたむずかしい顔付で、殆ど睨みつけるように静子夫人を見ていた。余りたびたび眼を合わしていても、静子夫人は自分から挨拶に来てくれる人ではなかった。それだから一層私にはこの夫人が聡明で、美しくさえあった。それは私にしても一度は挨拶はしたかったのであるが、まだ年は若かったし、智恵や学問のある女の人を無理にも嫌いの範囲にいれていたから、彼女のそばには行かなかった。いまの私なら、どんなにらくに話ができたか判らない。

だが、この杏夫人はあっとおもう間に、いつも素早く宴席からすがたを消していた。私が剥きにくい果物の皮を剥いて、眼を下向けにしている僅かな時間のあいだに、殆ど、うしろ姿さえ見せないで彼女は去っていた。

藤村は置時計を見ながら外出先の女というものが、外出しているという確定の事実の前で、ことさらに妻というものの程遠い曖昧なしたしみを与えるものであることを、毎度ながら感じていた。