Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.981 Zeichen · 295 Bildschirme
そして少し恨むような目つきをして、始めてまともに葉子を見た。口びるまでが苺のように紅くなっていた。青白い皮膚に嵌め込まれたその紅さを、色彩に敏感な葉子は見のがす事ができなかった。岡は何かしら非常に興奮していた。その興奮してぶるぶる震えるしなやかな手を葉子は手欄ごとじっと押えた。
「さ、これでおふき遊ばせ」
葉子の袂からは美しい香りのこもった小さなリンネルのハンケチが取り出された。
「持ってるんですから」
岡は恐縮したように自分のハンケチを顧みた。
「何をお泣きになって……まあわたしったらよけいな事まで伺って」
「何いいんです……ただ海を見たらなんとなく涙ぐんでしまったんです。からだが弱いもんですからくだらない事にまで感傷的になって困ります。……なんでもない……」
葉子はいかにも同情するように合点合点した。岡が葉子とこうして一緒にいるのをひどくうれしがっているのが葉子にはよく知れた。葉子はやがて自分のハンケチを手欄の上においたまま、
「わたしの部屋へもよろしかったらいらっしゃいまし。またゆっくりお話ししましょうね」
となつこくいってそこを去った。
岡は決して葉子の部屋を訪れる事はしなかったけれども、この事のあって後は、二人はよく親しく話し合った。