Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.981 Zeichen · 295 Bildschirme
一九
葉子はなおも息気も絶え絶えに、
「どうぞ出て……あっちに行って……」
といいながら、いつまでも泣き続けた。
一九
しばらくの間食堂で事務長と通り一ぺんの話でもしているらしい木村が、ころを見計らって再度葉子の部屋の戸をたたいた時にも、葉子はまだ枕に顔を伏せて、不思議な感情の渦巻きの中に心を浸していたが、木村が一人ではいって来たのに気づくと、始めて弱々しく横向きに寝なおって、二の腕まで袖口のまくれたまっ白な手をさし延べて、黙ったまま木村と握手した。木村は葉子の激しく泣いたのを見てから、こらえこらえていた感情がさらに嵩じたものか、涙をあふれんばかり目がしらにためて、厚ぼったい口びるを震わせながら、痛々しげに葉子の顔つきを見入って突っ立った。
葉子は、今まで続けていた沈黙の惰性で第一口をきくのが物懶かったし、木村はなんといい出したものか迷う様子で、二人の間には握手のまま意味深げな沈黙が取りかわされた。その沈黙はしかし感傷的という程度であるにはあまりに長く続き過ぎたので、外界の刺激に応じて過敏なまでに満干のできる葉子の感情は今まで浸っていた痛烈な動乱から一皮一皮平調に還って、果てはその底に、こう嵩じてはいとわしいと自分ですらが思うような冷ややかな皮肉が、そろそろ頭を持ち上げるのを感じた。