Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおんな

或る女

有島 武郎

Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.981 Zeichen · 295 Bildschirme

Aozora Bunko

「事務長は、なんですか、夜になってまであなたの部屋に話しに来る事があるんですか」

とさりげなく尋ねようとするらしかったが、その語尾はわれにもなく震えていた。葉子は陥穽にかかった無知な獣を憫み笑うような微笑を口びるに浮かべながら、

「そんな事がされますものかこの小さな船の中で。考えてもごらんなさいまし。さきほどわたしがいったのは、このごろは毎晩夜になると暇なので、あの人たちが食堂に集まって来て、酒を飲みながら大きな声でいろんなくだらない話をするんですの。それがよくここまで聞こえるんです。それにゆうべあの人が来なかったからからかってやっただけなんですのよ。このごろは質の悪い女までが隊を組むようにしてどっさり船に来て、それは騒々しいんですの。……ほゝゝゝあなたの苦労性ったらない」

木村は取りつく島を見失って、二の句がつげないでいた。それを葉子はかわいい目を上げて、無邪気な顔をして見やりながら笑っていた。そして事務長がはいって来た時途切らした話の糸口をみごとに忘れずに拾い上げて、東京を発った時の模様をまた仔細に話しつづけた。

こうしたふうで葛藤は葉子の手一つで勝手に紛らされたりほごされたりした。