Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるそびょう

或る素描

豊島 与志雄

Lesen Sie 或る素描 (あるそびょう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.802 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

その時私達は酒を飲んで、可なり酔っていた。私は彼の性情を心配して、いろいろ忠告めいたことを饒舌っていた。彼はおとなしく耳を貸していたが、ふいに云い出した。

「君の云う通りだ。僕は自分でも自分を制しきれなくなる時がある。君だから打明けるが、僕はとんだ破廉恥なことをやりかけたことさえある。……或る晩遅く、薄暗い横町を一人で通っていた。すると、どこかの女中らしい若い女と、ぱったり出逢ったのだ。断っておくが、君も知ってる通り僕はさほど性慾的な方じゃない。時々いかがわしい方面へ出かけていって、まあ生理的の必要だけは満たすこともあるが、決して深入りはしない。さっぱり面白くないんだ。球や碁やテニスには夢中になることもあるが、女には決して溺れない。それが、僕のひそかな矜りだった。ところが、その晩、どんより曇ったむし暑い晩だったが、夜目にまるまると肥ったその肉体と、ぱったり出逢った時、僕はどうしたはずみでか、ふいに、今晩は……と声をかけてしまった。馬鹿げた挨拶さ。だが、酔ってたんじゃないよ。全くの白面なんだ。そして声をかけながら、咄嗟にその女の手を握ってしまった。