Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうぎの

扇野

山本 周五郎

Lesen Sie 扇野 (おうぎの) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.727 Zeichen · 67 Bildschirme

Aozora Bunko

泊るのは角屋にぐあいが悪かった。しかしそんな時刻に帰ってもいばれるわけではないし、朝早く来るという、おつるの言葉にもみれんがあって、栄三郎はぐずぐずと泊ることになった。

「これは危ないな」おさとが水を取りにいったあと、彼はそっと自分にそう云った、「こんなことは初めてだ、うっかりするとひどいことになるぞ」

そして立ちあがったとき、なにか眼を惹きつける物があるので足を停めた。

畳の上に扇子が落ちていた。

女持ちの小さな扇子で、半ばひらいてあり、金地に赤いなにかの花が描いてあるらしい。きれいに片づいた青畳の上に、半ばひらかれた女持ちの扇子が、その主を思わせるかのように、ひっそりと落ちているのである。――栄三郎の眼が細くなり、にわかにするどく光るようであった。彼は唇をひき緊め、二歩ばかりさがってその扇子を見なおした。

「お冷を持ってまいりました」とおさとが戻って来た、「どうぞおやすみ下さいまし」

栄三郎は扇子を指さした。

「あれは誰のだ」

「ええあれは、つうちゃん」と云いかけて、おさとは例の喉声でえへえへと笑った、「おつる姐さんが忘れていったんですの、今夜はずいぶん酔ってらっしゃったし、酔うと忘れ物をするのがお得意ですから」