Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうぎの

扇野

山本 周五郎

Lesen Sie 扇野 (おうぎの) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.727 Zeichen · 67 Bildschirme

Aozora Bunko

八

「だめだ」と彼は吐きだすように呟き、広縁へ出て庭のかなたを見た、「なにかわけがある、競作をさせようというのはあいつの親ではなく、あいつ自身の企んだことだ、なにかわけがあって、あいつが自分で、――」栄三郎は、ふと口をつぐんだ。

――おつるのことか。

樋の山の出来事も無関係ではない、と孝之介は云った。そのことがいまはっきりと栄三郎の頭にうかんできた。するとにわかに、彼はおつるに逢いたいという衝動に駆られ、まるでうしろからせきたてられでもするように、そわそわと着替えにかかった。

八

おつるはもう他の座敷へ出ていた。桑名屋にも昼から客があり、栄三郎は階下の暗い六帖へとおされた。同じような小座敷の並んでいるいちばん奥で、縁側から三尺ほど隔てて檜葉の高い生垣があり、その向うは路次に沿って小さなしもたやになっているらしく、子供の駆けまわる声などがま近に聞えた。――おさとは南側の窓をあけたり、縁側へ簾を垂らしたりしながら、此処は暗くて狭いけれども、二階のように屋根の照返しがないし、冷たい風が入るから案外涼しいのだ、などといった。

「ほんのひと足ちがいでした」とおさとは気の毒そうに云った、「今日はいらっしゃるに違いないって、お午ごろに来たまんまお帳場で遊んでいらしったんですよ」