Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうぎの

扇野

山本 周五郎

Lesen Sie 扇野 (おうぎの) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.727 Zeichen · 67 Bildschirme

Aozora Bunko

栄三郎は筆を下に置き、手の甲で額の汗を拭いた。孝之介は扇子で胸もとを煽ぎながら、皮肉なうす笑いをうかべて栄三郎を見た。

「このあいだは樋の山で派手な一と幕があったそうだな」

「それが要談ですか」

「それだけが要談ではないが、関係がなくもないんだ」孝之介はゆっくりと云った、「あの女はこの土地いちばんの売れっ妓だが、それを二度か三度逢っただけで、さっそく人眼のない山の上へ伴れ出すというのは、いい腕だ、おまけに侍二人が抜刀してかかるのを、きれいに叩き伏せるに到ってはね」

「あの二人は泥酔していましたよ」

「しかし侍には相違ないんだ」

「前後もわからないほど泥酔していました」と栄三郎は云った、「また、あの人たちのためにも断わっておきますが、私はなにもしたわけではない、あの二人は自分で転んだのです、酔いすぎていて満足に刀を振上げることもできなかった、一人が自分の力に負けて転ぶと、他の一人がそれに蹴つまずいて転んだ、それだけのことだったんです」

「そう云えば、かれらの弁護になるとでも思うのかね」

孝之介は面白そうに喉で笑った。まっ白で丈夫そうな歯をみせ、いかにも興ありげな笑いかたで笑った。