Japanische Klassiker mit Furigana
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おうぎの
扇野
山本 周五郎
Lesen Sie 扇野 (おうぎの) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.727 Zeichen · 67 Bildschirme
栄三郎はこれは罠だなと思った。孝之介は栄三郎がそう思ったことを見てとった、彼は相手がそう受取るように、話をもっていったようであった。
「要談はそれだけだが」と孝之介は音をさせて扇子を閉じた、「其許のほうになにか云うことがあるかね」
栄三郎は黙って相手を見ていた。孝之介はおうように目礼をし、また扇子を半ばひらいて、それで陽をよけながら去っていった。すると、おそらく渡り廊下のあたりで、それを見ていたのだろう、すぐにおけいが広縁を廻ってあらわれた。
「ごめんなさい先生」とおけいは済まなそうに云った、「あの人止めてもきかなかったんです、困るからって、母さんがずいぶん云ったのに、勝手にずんずん入って来てしまったんです」
「いいよいいよ、大したことじゃない」
「どんな用があって来たんですの」
「話すほどのことじゃないよ」栄三郎はおけいのほうは見ずに筆を取った、「心配しなくてもいいってお母さんにそう云っておくれ」
おけいはなお、なにか云いたそうであったが、栄三郎が紙に向ったので、そのまま、気遣わしげに母屋のほうへ去った。おけいが去るとまもなく、栄三郎は紙をにらんだまま溜息をつき、筆を投げて立ちあがった。