Japanische Klassiker mit Furigana
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てがみ
手紙
久生 十蘭
Lesen Sie 手紙 (てがみ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.158 Zeichen · 30 Bildschirme
村上さんの仕事は、羊の毛を買うことではなかったのだろうと思います。マリハツ・シロウは、村上さんに百遍欺されても、怨みには思うようなことはありませんけれども、死ぬ最後の日まで、私に心をゆるされませんでしたことが、悲しくてなりません。しかし人間は死ねば、天の智慧をもらい、マコトもウソも一と目で見とおすといいますから、村上さんはいまこそマリハツ・シロウのほんとうの心を知られたのにちがいない、そうおもって、私は満足いたします。
ひとり渚にいる私の影は、だんだん伸びて、砂丘の上にまで届きました。私は使えるほうの手で穴を掘って村上さんの身体をころがしこみ、流木を積みあげて、鉄木とロダンゴをすって火をつけました。
それから小屋にあった古い塩豚の壺を洗って、村上さんの骨を入れ、ラップラップ(腰布)に包んで、帆綱で檣のてっぺんにつるしあげ、来るときは村上さんと二人であった刳舟で、私一人、六百浬の海をアンボンへ帰るために、舟を海の上に押しだしました。
あのさわぎで舟を覆してから、山刀も網も釣道具もみな海に沈め、刳舟にあるのは、村上さんの骨と私だけでした。私は半分しかない左腕を、動かぬように舷にくくりつけ、帆綱を腰に巻き、村上さんがそうしていたように、あおのけに艫に長く寝ました。