Japanische Klassiker mit Furigana
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すてご
捨児
Lesen Sie 捨児 (すてご) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.695 Zeichen · 10 Bildschirme
女はすぐさま汽車に乗って、懐しい東京へ着くが早いか、懐しい信行寺の門前へやって来ました。それがまたちょうど十六日の説教日の午前だったのです。
「女は早速庫裡へ行って、誰かに子供の消息を尋ねたいと思いました。しかし説教がすまない内は、勿論和尚にも会われますまい。そこで女はいら立たしいながらも、本堂一ぱいにつめかけた大勢の善男善女に交って、日錚和尚の説教に上の空の耳を貸していました。――と云うよりも実際は、その説教が終るのを待っていたのに過ぎないのです。
「所が和尚はその日もまた、蓮華夫人が五百人の子とめぐり遇った話を引いて、親子の恩愛が尊い事を親切に説いて聞かせました。蓮華夫人が五百の卵を生む。その卵が川に流されて、隣国の王に育てられる。卵から生れた五百人の力士は、母とも知らない蓮華夫人の城を攻めに向って来る。蓮華夫人はそれを聞くと、城の上の楼に登って、「私はお前たち五百人の母だ。その証拠はここにある。」と云う。そうして乳を出しながら、美しい手に絞って見せる。乳は五百条の泉のように、高い楼上の夫人の胸から、五百人の力士の口へ一人も洩れず注がれる。――そう云う天竺の寓意譚は、聞くともなく説教を聞いていた、この不幸な女の心に異常な感動を与えました。