Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せっぷん

接吻

江戸川 乱歩

Lesen Sie 接吻 (せっぷん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.279 Zeichen · 13 Bildschirme

Aozora Bunko

六

妙な押問答になって来た。夫は部屋の正面の壁に沿って置かれた箪笥だといい、妻は左側面の壁に沿って置かれたそれだと主張する。両人の言い分の間には九十度の差異がある。

六

「ア、分りましたわ」

突然お花が叫んだ。

「あなた、まあこちらへ来てごらんなさいまし。分りました、分りました」

無暗に袖を引っぱるので、宗三仕様事なしについて行くと、それは納戸だ。

「これ、これ、あなた、これに違いありませんわ」

そこで、お花がそういって、指さしたのは、一個の新しい洋服箪笥。去年の暮、臨時手当に据置貯金の利息を足して買い整えた新式洋服箪笥。それが一体どうしたというのであろう。

「お分りになりまして。ホラ、この扉についている鏡ですよ。この扉が開いていて、丁度障子の穴の前に来ていたのですよ。ですから、正面の箪笥が隠れて、飛んでもない左側の箪笥が写って、それが丁度正面にある様に見えたのですよ」

成程、洋服箪笥の扉の鏡が、障子の穴の前に四十五度の角度で開いていたとすれば、そこへ映った左側のものが真正面に見えた筈だ。二つの箪笥の形もよく似ているので間違うのは無理ではない。殊に薄暗い電燈の光で、しかも大いそぎで見たのだもの。