Japanische Klassiker mit Furigana
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しゃよう
斜陽
Lesen Sie 斜陽 (しゃよう) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.822 Zeichen · 176 Bildschirme
静かな、秋の午前。日ざしの柔らかな、秋の庭。私は、編物をやめて、胸の高さに光っている海を眺め、
「お母さま。私いままで、ずいぶん世間知らずだったのね」
と言い、それから、もっと言いたい事があったけれども、お座敷の隅で静脈注射の支度などしている看護婦さんに聞かれるのが恥ずかしくて、言うのをやめた。
「いままでって、……」
とお母さまは、薄くお笑いになって聞きとがめて、
「それでは、いまは世間を知っているの?」
私は、なぜだか顔が真赤になった。
「世間は、わからない」
とお母さまはお顔を向うむきにして、ひとりごとのように小さい声でおっしゃる。
「私には、わからない。わかっているひとなんか、無いんじゃないの? いつまで経っても、みんな子供です。なんにも、わかってやしないのです」
けれども、私は生きて行かなければならないのだ。子供かも知れないけれども、しかし、甘えてばかりもおられなくなった。私はこれから世間と争って行かなければならないのだ。ああ、お母さまのように、人と争わず、憎まずうらまず、美しく悲しく生涯を終る事の出来る人は、もうお母さまが最後で、これからの世の中には存在し得ないのではなかろうか。