Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.841 Zeichen · 376 Bildschirme
「今夕、本陣の貝を合図に、いっせいに山へ攻めかかれ」
と、さきに三名に下した厳命と同じ令をもって、自身から伝えた。
諸将のうちに、武井、明智、佐久間の三将と共に、焼討ち反対のものも多くいたらしいが、すでにその三人も、命に服しているので、みな二言もなく領受して去った。
陣地の遠い部隊へは、中軍の使番が、伝令をおびて駒をとばした――伝令はその以後も、次々に前線の山麓へ放たれた。後からのそれは、作戦行動の指令であった。四明ヶ嶽のうしろに、夕雲の燦爛をとどめて、陽は落ちかけていた。――湖上にも虹のような光芒が大きく走って、水面は波騒を起こしていた。
「……見よ」
信長は丘に立って、叡山の上を――さらにその上の団々たる雲を仰いで――あたりの者にいった。
「天意も、信長の意思を、励ましたもうている。――風がつよくなって来た。焼討ちをかけるには上乗な空あいであるぞ」
そういう間にも、颯々と、秋の夕風の冷やかに、そして次第に烈しく、人々の陣羽織をふいて来た。
ほんの五、六名しか、彼のまわりにはいなかったが、その時、夕風を孕んでふくらんでいる彼方の陣幕の辺に、ひとりの味方が、誰か探しているように覗きまわっていた。