Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.841 Zeichen · 376 Bildschirme
その日もまだ叡山は黒煙をあげていた。おとといからの余焔である。
かれの大虐殺の手をのがれて、京都へかくれこんだ僧俗もかなりあるらしい。その者たちの口から信長の名は、
「生ける魔王」
だとか、
「地獄の使者」
だとか、また、
「暴戻な破壊者」
だのと、極端な恐怖の象徴に擬せられ伝わっていた。
眼に、比叡や四明の大紅蓮を見、耳に当夜の惨状を聞かされていた京洛の人々は、信長が兵をひいて下山して来ると聞くと、
「こんどは京都か」
と、震えあがって、
「室町将軍の館は焼討ちをまぬがれまいぞ」
などと、昼ながら戸を閉めたり、荷をからげて逃げ支度する者も多かった。
しかし信長の兵は、加茂川べりに屯して、市街に入るを禁じられた。
禁じた者は、それを統率しているおとといの魔王である。
かれは少数な部将だけをつれて一寺院にはいった。そこで甲冑をぬぎ、湯漬を喰べ終ると、これはまた優雅な衣冠にすっかり着かえて出て来た。
駒も派手な鞍をおいた月毛に乗り換え、わずかな部将だけは甲冑のままであったが、それらの十四、五名を従えて、ゆるやかに大路を通って行った。
魔王のすがたは余りにも平和であった。