Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.841 Zeichen · 376 Bildschirme

Aozora Bunko

「…………」

「殿。……殿ッ」

「うるさいッ」

家康は、忠広の顔も見ない。――陽は沈んで、刻々、三方ヶ原の野末には、白い夕靄と夜の闇とが、二条に濃くわかれていた。

冬風に乗って、使番の旗は、頻々と……悲報をそこへつたえた。

「織田家のお身内、佐久間信盛どのには、まっ先に潰え、滝川一益どのにも逃げくずれ、平手長政(汎秀)どのはお討死。酒井どの、ひとり御苦戦にございまする」

「敵、武田勝頼の勢、山県隊と力をあわせて、お味方の左翼をかこみ、石川数正どのには、傷を負われ、中根正照どの、青木広次どのなど、次々に御戦死です」

「松平康純どの、敵のなかへ駈け入ったまま、斬死なされました」

「本多忠真どの、成瀬正義どの始め、その手勢八百余人の将士、信玄の旗本めがけて深入りされ、数千の重囲におちて、生き還ったもの幾名もございませぬ」

次の声、また次の声と、敗報は悲調をおびてくるばかりだった。

「御免ッ」

なに思ったか、鳥居忠広は、やにわに家康のからだを引っ抱えて、部下と共に、かれの駒のうえに押上げた。

「――逃げろ!」

それは、馬の尻を打って、馬にどなったのである。家康をのせて馬が飛ぶと、忠広その他の旗本もあとを追って駈け出した。