Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.320 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

池之坊の門口へ、ひとりの町人が佇んで、宿の女をつかまえ、何か、世間ばなしをしている。

外から戻って来た渡辺天蔵の耳に、ちらと、いやな言葉が入った。女へ、町人が訊いているのである。

「……いや、たしかに、いるだろう。町の衆から聞いているよ。きのう黄昏、跛行をひいた汚い客が泊ったと」

すれちがいに、天蔵の姿を、女は見ぬふりをして見送っていた。着くとすぐ宿の主へ、天蔵から口止めしてあるので、女は、答えに困ったものらしい。

天蔵は、部屋にはいると、蒲団の中の顔をのぞいて、

「どうです、昨夜、今朝と、まだ二度ほどの入浴では、効き目もありますまいが、すこしは楽になりましたか」

「む、む」

と、枕の上から振り向いて、

「だいぶ楽だ。温泉は効くものだな」

「せっかく、お楽になったところを、酷い気がいたしますが、今夜はここを立たねばならぬかと存じますが」

「なに。……ああそうか。嗅ぎつけて来たのだな」

「どうも、そんな気ぶりが」

「ぜひがない、いつでも立つ。決して、足手まといに考えてくれるな。いざとなれば、片脚ぐらいはなくても駈けるよ。ははははは」

障子の外に、人の気はいがした。