Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.320 Zeichen · 398 Bildschirme
――左様に申したであろうが」
「も、もうしました……」
「これッ」
「……あ」
「いつ、汝が骨折ったか。今日の甲州入りに、いかほどな殊勲をなしたというのか」
「も、勿体ない」
「なに」
「光秀、いかにお祝酒に酔いましょうとも、なんで左様な、驕りがましきことばを」
「さもあろうず、そちに、驕り得る理由はない。したが心の油断というもの、信長が酒興にまぎれ、耳をそらしておると思うて、つい不平を申したな」
「畏れ多い。天地の神も御覧あれ。光秀、破衣孤剣の身より、今日の重恩をいただきながら、なんとて」
「いうな」
「お放しください」
「放してやる」
信長は突き退けて、
「於蘭。水」
と、大声で呼んだ。
蘭丸が、器に水をたたえて捧げた。その水を手にとる眸は火であった。彼は彼自身の心火に燃やされて肩で息をしていたが、光秀は、いつか主君の足もとを去ること七、八尺も向うに、襟を正し、髪をなでて、板敷に胸もつくばかり平伏していた。
「…………」
あくまで取り乱さないそのすがたが、なぜか好意に見えないのみか、信長の足をしてさらにそれへ歩ませようとさえしかけた。
「……あッ。もし」
蘭丸がたもとを抑えなければ、ふたたび広縁の床が鳴ったろう。