Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.758 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

また、父信長が、多年手塩にかけて来た一家臣が、このときは、主従の情をこえて、骨肉にも近いような感情で、つよく眼に映った。

「オオ、筑前か」

彼が手を伸べるも待たず、側近くまで早足に歩いて来た秀吉は、いきなりその人の手を取ってかたく握りしめ、

「信孝さま!」

それだけをいった。そしてあとは何もいわず、いい得ず、眼と眼に語らせていた。

どっちの眼にも滂沱たるものがながれた。その涙のなかに信孝は父亡ききょうの気持をことごとくこの一家臣に語り尽していた。秀吉もその胸のうちを察すればこそであった。彼はやがて、固く握っていた相手の手をやわらかにはなした。それと共に、地にひざまずいて、なおしばし嗚咽しつつ云った。

「よくぞ。よくぞ……お渡り下されました。いまは何事も申しあげている遑もなし心も他にありません。……ただ、それのみをありがたくお礼申しあげまする。またこのことこそ、先君の御霊もかならず泉下において御満足に思し召しておらるるであろうことを信じて疑いませぬ。……やれやれ、筑前もおすがたをここに拝して、臣下の道のひとつを完ういたしたような心地がされまする。真実、高松以来、初めてのうれしさにござりまする」