Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.758 Zeichen · 383 Bildschirme
「帯刀。なぜ止める?」
光秀の声はするどかった。
老臣の比田帯刀なのである。帯刀の手はすぐ主人の馬の口輪をつかんでいた。ひとたび、悍気にまかせた馬は容易にその本能を制しきれないもののように、頻りに土を蹴って足掻いた。
「与次郎も、三十郎も、なぜお止めせぬか。降りろ、降りろ」
比田帯刀は、数騎の旗下をさきに叱って、慇懃、光秀へ頭を下げた。
「常のわが殿とも覚えませぬ。――勝敗は一場の変に過ぎませぬ。目前の一敗をもって、直ちに、おん身を捨てんと遊ばすような軽挙に出るは、日向守光秀様らしくもないことです。血迷えりと嗤われましょう。――なおなお、ここには敗れても、坂本には御一族もあり、各地にやがてを待つ諸将の散在すること、必ずしも、後図の策なきではありません。……まず、ここはひと度、勝龍寺の城まで、お立ち退きがしかるべくと思われまする」
「おろかよ、帯刀」
光秀は、悍馬のたてがみと共に、顔を振った。
「――常ならぬ今だ。常の光秀をもってわれと視るか。駈け崩された諸隊の兵も、光秀先陣に立てりと聞けば、ふたたび結集して鋭気を取り戻そう。――かたがた、御牧三左の一隊を、敵中に捨て殺しはできぬ。