Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.758 Zeichen · 383 Bildschirme
老母はふたりだけを残して立った。
「寧子」
「はい」
「そなたも、このたびは、何かと心労であったろう。が、前後の処置、誤りなく、よく母上をお護り申しあげてくれた。秀吉もそれのみ案じていたが」
「武人の妻には、これくらいな難儀は、いつあるか知れぬはずのものと、日頃、覚悟しておりましたせいか、さほどとも存じませぬ」
「そうか。総じて苦難というものは、そこを乗り越えて、苦難をうしろに振り向いてみると、おもしろい、何とも愉快なものだ。……ということがわかったろう」
「いま、こうして、わが夫のお無事を眺めていることが、ほんとに仰っしゃるとおりな心地でございまする」
「人生、その起伏がなくては、何の味もない。――夫婦の仲とて、同じようなものではないかな」
「ホホホホホ。左様でございましょうか」
「中国の長陣中、安土までは帰っても、長浜の家まではつい立ち寄るいとまもなかった。――が、こうして久しく見ぬ妻に久し振りで会うと、わが家の古女房も、何となく目にさやけく見え、そなたのつつましさまでが、花嫁の頃を思い出させる」
「ま。――」
と寧子は顔をあからめて、
「何を仰せ遊ばすかと思えば」