Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.757 Zeichen · 375 Bildschirme
「いつもせっかちな子じゃてのう。さて、湯漬には何がめずらしかろ」
「御老母さま。よい物がござりまする」
「よい物とは」
「お庭をごらん遊ばしませ」
寧子は起って、塗骨の障子の腰にひざまずき、一尺ほどそこを開けた。なお春の夕ともいえぬ寒さなので、老母が襟をすくめもせんか――と、流れ入る冷えを怖れながら、
「はて、何か?」
たそがれの庭面には、ところどころに、土佐派の絵師が屏風に盛った雪のように、白いまだらが厚く消え残っていた。広芝のあなたにも、築山のすそにも、まだ若菜の色も木の芽も見えない春なのである。
「あれ、あの雪の下の物でございまする。すこし土を掻きさがせば、もうきっと、青い青い蕗のとうが、芽をふいているに違いございませぬ。それを採って蕗味噌にしてさしあげたら如何なものでございましょう」
「おう、おう、よいものへ気がつかれたの。ここでもまだ膳部に見ぬゆえ、あの子もまだたべていないにちがいない」
老母は縁へ出て来て、上の掻着の裾を、腰衣とともに短く括りはじめた。夕方の寒さではあるし雪もある。寧子は、お風邪でも召してはと、たって止めたが、老母は早や庭へ降り立って笑いながら云った。