Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.757 Zeichen · 375 Bildschirme
みな領民には見覚えのある人たちである。
「寒いのに」
秀吉のそういった片語だけが、ふと、土下坐の上に聞えた。
(私たちのことを思いやって下されたのだ)
領民は直感した。せつな、一しお頭が下がって、町と道のつづく限りつづいている土下坐の人影は、靡くがごとく、なおひれ伏した。
「どの家の鏡餅も、大きゅう出来ておるよ」
これも秀吉の声だった。町中に馬蹄の音もゆるく大股に運ばれていた。
地へ垂るる慈眼と――
仰ぐ無数の信頼の眼と――
この場合、二者は完全な一者だった。別体でなく、同体である。もし別々であれば、この光景は地に描けない。驕りと卑屈との対立から、平等に名を藉る闘争や、際限なき人間の欲望の葛藤が、永劫に血で血を洗いはじめるであろう。
真の平等は、形に作られた平面にはない。儼たる上下にある。ことばの如く、上下が真の一体一者になったときにある。
侍――さむろう――下坐に着く――武士の本質もさむろう下坐の姿にある。その武門の棟梁に下坐する民も、強いられてするのでなく、われからする信頼と安心の姿なのである。
こよい、秀吉を仰いで、涕涙している老人も少なくない。