Japanische Klassiker mit Furigana
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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Lesen Sie 新潮記 (しんちょうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 155.541 Zeichen · 305 Bildschirme
相手のようすが急に変ったので大助はほっとすると同時に少し気ぬけがした、「どうなりますか、おたずねするつもりではいるのですが」
「是非とも、是非ともそうしなくてはいけません、これからの日本の動きの原動力は水戸にある、水戸の原動力を燃やすものは東湖先生です、こう云うとおそらくあなたは妄言だとお思いになるでしょうが、それはあなたがまだ水戸を知らず東湖先生の精神を知っていないからです」
男は一瞬まえに激発した昂奮とは別の意味で、一種の偏執狂とも思える情熱に駆られて語りだした。それはもうごく云い古されたありきたりの説で、なんの新味もなかったし退屈きわまるものだった。幕府の秕政を鳴らし、尊王を叫び攘夷を唱える、聞く者にとってそれが退屈であろうと無味乾燥であろうと構わない、そんなことはどちらでもいい、かれはただ自分で自分の言葉に酔っているだけなのだ。大助はうんざりした、うんざりしながら、それとなく妹のほうを見やった。
藤尾と呼ばれる娘は十七八でもあろうか、眉のきわだって美しい、陶器のような冷たい白さの肌をした、どこか憂いを湛えた顔つきである。細面のところは兄に似ているが、唇もとの凛として力のある線、人を見るときの眸子の射止めるような光りは、兄と違って熱狂することを知らない、しずかな、むしろ冷たくさえある理知の質をあらわし