Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
何処へ行くと云うあてもない。
東中野のボックスのような小さい駅へ出て、釣り堀の藪の道の方へ歩く。駅前の大きな酒屋だけが明るい燈火を夜霧の中に反射している。星がちかちかとまばたいている。辛抱強く。何事も辛抱強くだ。いざという時には、甲府行きの汽車にひかれて死ぬ事も賑やかな甘酢っぱい空想。だが、神様、いまのところはこのままでは死にきれぬ。
(十一月×日)
豪雨。土肌を洗い流す程の大雨なり。尻からげになって会社へ行く。池田さんは、紺飛白のビロード襟のかかった雨ゴートを着て来る。仲々意気な雨ゴートなり。今日は弁当なし。昼は雨の中を、六本木まで出て、そば屋でそばを食べて、ふんだんにそばづゆを貰って飲む。どろりとしたそばづゆに、唐辛子を浮かしてすする。
六本木の古本屋で、大杉栄の獄中記と、正木不如丘編輯の四谷文学という古雑誌と、藤村の浅草だよりという感想集三冊を八十銭で求める。獄中記はもうぼろぼろなり。
富田さん、麻布のえち十と云う寄席へ行かないかとみんなを誘うけれど、私は雨なので断って早く家に帰る。沛然とした雨が終日つづく。この雨があがれば、いよいよ冬の季節にはいるのであろう。