Japanische Klassiker mit Furigana
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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.076 Zeichen · 256 Bildschirme
私はふと、曩日、初代綾之助の語るのを、ゆくりなく聴く機会のあったことを思いだした。寒い寒い晩に、寒風に吹かれながら久しぶりで見聞きする興味にひかれて、寒さに顫えながら煙草のけむりと群衆のうごめくなかに隅の方へ坐った。騒然たる四辺を見ると、決して驕った心からではないが、あんまり群集の粗野なのに驚かされた。楽声を聴いて心を悦ばせるには、上品でなくてはならないというのではないが、いかにも穢苦しい感じを与えられた。下卑ていたこともいなまれなかった。
古い流行のひとつとして、以前女義太夫――ことに綾之助の若盛りにはドウスル連というものの盛んであったことをきいた。しかもその多くは年少気鋭の学生連であったそうで、いまそうした年頃の、青春の人は多く浅草の歌劇団にと行き、高級の人は音楽会を待ちかねて争ってゆくようである。その夜も、青年は一人も見受けなかったといってよいほどであった。時代がそうなったのかも知れないが、義太夫を聴く人が中年以上のものに限られて来たようになったというのも詭弁ではないと思った。無理な道徳や、不条理な義理を、苦しい人情としていた時代は過ぎつつあるのであった。