Japanische Klassiker mit Furigana
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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.076 Zeichen · 256 Bildschirme
豊竹呂昇
私は今朝の目覚めに戸の透間からさす朝の光りを眺めて、早く鶯が夢をゆすりに訪れて来てくれるようになればよいと春暁の心地よさを思った。如月は名ばかりで霜柱は心まで氷らせるように土をもちあげ、軒端に釣った栗山桶からは冷たそうな氷柱がさがっている。崖の篠笹にからむ草の赤い実をあさりながら小禽は囀っている。
寒明けの日和はおだやかで、老人たちが恋しがるばかりではない日の光りはのどかだ。
(ほんとに早く鶯の声を聴くようになるといいな)
あの寝ざめの、麗音をなつかしみながら私は呟やいた。町中に生れ育った私は、籠に飼われない小禽が、障子のそとへ親しんで来てきかせてくれる唄声を、どれほどよろこんでいたかしれない。真冬の二月は頬白も目白も来てくれないので、朝はいつもかわらない雀の挨拶と、夜は時おり二つ池へおりる、雁のさびしい声をきくばかりだった。
去春は毎朝窓ちかくへ来て鳴いてくれたあの声、鶯は日中は遠く近くをゆきかえりして円転と嬌音をまろばした。あの友だちが一日もはやく来てくれるといいと思いながら、夜具の襟裏ふかく埋もれて、あれやこれやはてしなくする想像は、私にとっては一日中の楽境であり、愉快な空想の天国でもあり、起出してしまえば何にも貧しく乏しい身に、恵まれた理想郷でもある。