Japanische Klassiker mit Furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.172 Zeichen · 277 Bildschirme
と、私は口のうちで、石の上露子の詩をうたって見ていた。
それを、大きな掌は、遠くからおさえるように動かされて、
「あれは美人じゃからなあ――石河の夕千鳥には、彼女の趣味から来る風情が添うが――わしが、今感心しておる女子は、箏のこととなると、横浜から、箏を抱いてくる。小いさな体をして。」
ちいさな、というのに力を入れて、丁度絃の締まった箏を、軽々と坐ったまま、ぐるりと筆規のように振りかえた便次に、抱えるようにして見せた。
「こんなようにしてじゃぞ。」
私の顔は笑っていたに違いない。鼓村師は割合、細心なところもあるので、箏を振り廻したのを、乱暴したように笑っているのだとでも思いもしたように、豪放のような、照れたような笑いに、また首をちぢめてまぎらわした。
水の清い、石川河の磧に近く庵室をしつらえさせて、昔物語の姫君のように、下げ髪に几帳を立て、そこに冥想し、読書するという富家の女は、石の上露子とも石河の夕千鳥とも名乗って、一人静かに箏を掻きならす上手の名があった。それからまた、横浜から箏を持って習びにゆくという女にもわたしには心あたりがあるので、思わず破顔したのだった。