Japanische Klassiker mit Furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.172 Zeichen · 277 Bildschirme
みんな、座中のものは、びっくりしたように、おかしさもおかししではあるが、気の毒さで押だまってしまっていた。
と、その時、その騒ぎと引き離れて、膝の上に箏尻を乗せ、片手で懐紙に書いた譜を見ながら弾きだしたのは浜子だった。彼女は、喧嘩には捲きこまれず、両方の言い分をきいて、両方の譜を、その争いのなかからうつしとって、合うように接合してしまっていた。
浜子が弾きだすと、和三郎は煙草を止め、鼓村も弾く手を伏せて聴いた。
「あ! それなら好い」
そう叫んだのは和三郎だ。
「ああ、そや、そや。なんじゃ、それじゃったわい。」
と、鼓村さんも叫んだ。
みんなの顔に、ホッとしたくつろぎが浮び、同時に誰も彼もの笑いが爆発した。
「なんのこった。」
と、呟きながら、和三郎は三味線をとって、浜子の方へ、せわしなくむき直った。鼓村さんは、例の首をひっこめて、きまりわるそうに、箏にかかった水の始末を、弟子たちにしてもらった。
みんなが、急に景気よく、しゃべったり笑ったり、揶揄したりするなかで、浜子だけは、別天地にいる人のように、すこしも動揺されず、直に最後まで完全につくりあげてしまった。